家庭菜園♡復興計画

安心して楽しめる家庭菜園のための放射能防御

このページの最終更新日:2013/03/24

移行係数から作物のセシウム濃度を予測してみよう

セシウムの移行係数とは「農作物中のセシウム濃度 ÷ 土壌中のセシウム濃度」です。
つまり、土の中のセシウムが作物に吸収される割合のこと。
現在、農林水産省が新たなデータを元にその割合平均を算出していますが、
2009年にJAEAから発表されたデータを元に、ざっくりと
作物に含まれそうなベクレル数を計算してみましょう!

米類

設定値 変動幅
0.08% 0.01%〜1.00%

Bq/kg

Bq/kg

葉菜

設定値 変動幅
0.04% 0.002%〜0.60%

Bq/kg

Bq/kg

非葉菜

設定値 変動幅
0.03% 0.001% 〜1.00%

Bq/kg

Bq/kg

果実

設定値 変動幅
0.20% 0.04%〜4.00%

Bq/kg

Bq/kg

どうですか?どれも意外と小さな数字になったのではないでしょうか。
これら作物に含まれるであろうセシウム。この数字をどう考えれば良いのか、悩むかたも多いと思います。
1つの目安としては、年間1mSvの被ばくとなるには、50,000ベクレルぐらい食べないと到達しない、ということ。
もしも5Bq/Kgの野菜ならば、10トン食べる必要があります。
そんな量は到底、無理。
セシウムの体内での半減期は、10歳の子どもで20日、大人で70日(30年ではありません)。ウンチやオシッコで体外に出ていったり、放射能を失ったりして減っていきます。

作物へのセシウム移行については、たくさん数字があって分かりにくいですが、このように、植物に移行するセシウムの濃度には、かなりの開きがあることが分っています。
目安となるのは「設定値」ですが、変動幅がたくさんある、という事を覚えておきましょう。

教えて頂きました!on Twitter

現在の研究状態はこちらで! 農林水産省 農地土壌中の放射性セシウムの野菜類と果実類への移行について

移行係数についての解説 東大 有田先生による放射線関係の資料ページ「農作物の移行係数」

どうして数字に幅があるの?

作物を育てる土壌の状態で、セシウムの吸収具合が変わる

土の中に含まれているセシウムは、その全てが植物に吸収されるわけではありません。よく「リン酸は土と結合しやすいので、効きが悪いことがある」なんて聞きますね。それと同じように、土壌のセシウムも植物が吸収できない状態になることが多いのです。

けれどそれは、土を構成している物質の種類や量によって、大きく違いが出ます。さらに、自由に動けなくなったセシウムは、地面の表層付近に多く集まっていますから、そこに生える植物の根の深さによっても影響度が大きく変わってきます。セシウムと性質が似ているカリウムの施肥状態やpH(酸性度)によっても、吸収が左右されます。

つまり、土の中のセシウムは、土の種類や状態によって植物に吸収される量が違う、と言うこと。
土中のセシウム濃度と植物に移行するセシウムの量は、あんまり関係が無いんだナ

少し科学的なお話

植物の3大栄養素でもあるカリウムと同じ様に、セシウムは陽イオンとしてふるまいます。カリウムやナトリウム、セシウムには、プラスの手(荷電)がひとつ、あるんだそうです。

一方、土の成分の中にはマイナスの手(荷電)を持っているものがあるので、プラスの陽イオンの手をしっかり握って離さない。さらに土の中には、セシウムのサイズにピッタリな穴をもつものがあります。少し前にセシウム防御策として有名になった、ゼオライトやバーミキュライトがそうです。この穴にセシウムは、すっぽりと入り込んでしまうことが分っています。固定化されてしまうのです。

こんな風にセシウムは、意外と自由な行動がとれないんですって。だから作物へ吸収される量は、土中の濃度に比べてとても少なくなるのです。逆に考えれば、土壌のセシウムは、がんじがらめにしてしまえ!というのが、家庭菜園のセシウム対策のポイントの1つとも言えそうです。

セシウムの特性を理解して、上の計算ツールの「変動幅」の小さいほうの数値を目指しましょう!

安心菜園のための、栽培ポイント

セシウムと土の関係を詳しく知ろう!
日本土壌肥料学会 放射性セシウムに関する一般の方むけのQ&Aによる解説

教えて頂きました!on Twitter

気をつけたほうが良いお野菜もある?

作物の移行係数については、実は原発事故以前に調査されていたサンプル数が少なかったようで、調査の範囲が狭いがゆえに「あれっ?こんなに移行しちゃうの?」といういくつかの作物があります。福島県を中心に実測データが充実しつつある現在は逆に「思ったより移行しないね」という空気が強くなってきてます。今後は膨大な実測値とともに、更なる研究が行われると思います。

でもま、一応、念のため。それらを確認しておきましょうネ。

カラシナ

根拠の論文数が少ないらしいのですが、ともかく、要注意とされています。からし菜…って呼ばれてるモノって色々とあって困るのですが、「アブラナ科」のからし菜だそうです。(って、どれもそうじゃん)そもそもアブラナ科は、セシウムを吸収させて除染に使おう!という動きもあったぐらいですから、注意するに越したことはありません。

キャベツ

最大値はちょっと高いですね。これもアブラナ科。キャベツの根は浅いので、それも影響があるのかもしれません。福島県のモニタリング調査結果「ふくしま新発売。」を見てもND(検出せず)が殆どなのですが、念のために注意して育てるようにしましょう。表層の土5cmをどかすだけでも、殆どのセシウムが除去できるそうですヨ。

ジャガイモ・サツマイモ

こちらも、モニタリングの結果ではほぼNDですが、ジャガイモやサツマイモは、栽培方法が他の野菜とは少し異質なため、注意しておいたほうが良いと思います。趣味の菜園での無肥料栽培や極端なpH調整は控えたほうが無難です。作る時は、しっかりと堆肥や肥料を入れて。沢山食べる場合は、できれば検査をしてもらいましょうネ。

このほか、ホウレンソウやオカヒジキなどのアカザ科の植物にも、移行係数が高かったという報告があります。心配ならば無理に露地栽培せずに、プランターで栽培すると良いでしょう。土のpH調整は、安全な資材を使ってくださいね。それから、小麦はお米よりも、移行係数が高いそうです。家庭菜園で小麦を作る…ってあまり聞きませんが、もし育てるならば、注意が必要だそう。
けれども、家庭菜園の主役でもある、夏野菜・実物野菜はセシウムの移行は少なく、心配が必要な地域は極ごく一部です。
普通に暮らしているエリアならば、トマトもナスも大丈夫。
苗を植付ける前にしっかりと土作りをして、元気に育ったお野菜を美味しくいただこう!

移行係数について、もっと詳しく! @tsokdbaさんのブログ記事「土壌中の放射能はどれだけ植物に移行するのか?」